参加選手とペーサーやサポートクルーの皆さまへ
今年の信越五岳トレイルランニングレースにご参加くださり誠にありがとうございました。大会は過去に例を見ない悪天候に見舞われ、スタートから雨の降る中でのレース開催となりました。私と大会本部は途中、選手の安全を第一に考慮する為の8Aから先をエスケープ(ショートカット)コースへと変更する判断をいたしました。霧雨が降る朝の時点では予報や各情報がレース後半の時間帯は雨も弱まる内容でまとまった雨が降るとされた午前中を乗り切れば午後はコンディションが良くなってくれるだろうとレースを通常コースにてスタートさせました。しかしスタート後の雨は予想以上に強く降り、選手は濡れ、泥に滑りながら1A,2Aと通過していきました。まだスタート後20kmにも関わらず、通常よりも心身ともに疲労をしている様子でした。この状況では多くの選手が8Aまでの到着でひどく疲労しきってしまうレース展開が予想されました。夜間には気温も下がり、濡れながらの瑪瑙山を越えてのレースは選手が低体温や急な斜面での転倒のリスクも非常に高まり大変危険と判断。そして夜間はまた雨が降るという予報もあり、山中に配置される大会スタッフの安全確保と登山者も多いこのエリアのトレイルの保護というのがエスケープコースに変更をさせていただいた理由でした。
何としても信越五岳の110kmを走りたいという想いを胸にエントリーされた方々もいらっしゃったと思いますがどうかこの状況下でのコース変更理由をご理解いただけましたらと思います。レースは中盤に入り、各エリアの天候と状況を確認しながらレースを進め、エリアによって雨は上がっているような場所もありました。しかし、トップグループがゴールへ入りだした頃、現状のコースで選手にとっては最もハードとなり、安全が心配された5A〜6A区間の状況を確認すると、トレイルには水が流れ、ロープも設置し、通常は足首の深さにも満たない沢は増水し、今後女性や体力の落ちた選手は渡渉できなくなり、トレイルを進んでいくことが非常に困難になるだろうという情報を現場スタッフから私が直接聞きました。私自身これまでこの場所へ雨の中の夜間に何度も入っているので状況が把握でき、予報、想定以上の雨量と現地の報告から、この区間を夜間に多くの選手が時間をかけて通過させることは大変危険と判断し、走る選手と働くスタッフの身の安全を第一に考え5Aの関門時間を早めました。
私自身も走る身であり、ゴールへと辿りつくことを目指した選手の心を理解しながらの苦渋の決断でした。レースを進むグループの後半になればなるほど進むペースがゆっくりとなります。5Aから先のトレイルに流れ込む水は非常に冷たくなっていて、気温も下がる夜間、この水に長くひたすら浸かり続けることは選手を低体温にさせにいかせるような状況でした。暗くなり視界も悪いトレイルでは動きにくくなった体は転倒を増やし、さらなる危険性を高める予想ができました。よって少しでも夜間の5A〜6Aに差し掛かる選手を増やしてはいけないという判断から、事前案内も無い中での関門時間切り上げを行いました。この事前案内をしなかったことには理由がありました。正規の関門時間内で5Aまで心身ともにギリギリのところで進んでいた選手が時間の早まったことを聞き、焦せり、オーバーペースになってしまい、選手の新たなトラブルを導き兼ねないという心配がありました。この5Aにてレースを終了させてしまった選手やペーサーの方々から関門短縮通知が無かった、突然言われてもとという言葉を受けましたが上記理由がありまして大会側として選手の安全、大会スタッフの安全を守れるように最善を尽くした判断と変更内容だったことをご理解いただけますようどうかよろしくお願いいたします。急遽変更の為、関門になる5Aでは選手への配慮が足りない対応もあったことと思われます。変更を判断した私の準備、経験不足から招いた内容にあったと思われます。大変申し訳ありませんでした。
今回の大会開催にあたり、この信越五岳に参加する選手の皆さんのこの大会にかけた想い、かけてきた時間、出場の為の様々な苦労、ペーサーやサポートクルー、そして家族の想い、あらゆる心の内を考慮したうえでの決断、変更だったのですが至らない点も沢山あり、選手と関わられた方々が残念に感じ、悔しいと思われる内容となってしまいましたこと深くお詫び申し上げます。
天候とアウトドアスポーツは良くも悪くも非常に難しい関係にあると思います。
荒天時に行われる大会側の判断を快く、納得していただけるように運営の質を向上させられるよう努力いたします。参加する選手の方々には安心してレースの魅力を満喫していただきたいと思います。その為にも今回の反省を生かし、快適な大会運営、安全管理を行うためこの度の経験を今後に生かしていきます。信越五岳トレイルランニングレースのトレイルを今後も沢山のランナーに走りに来ていただけましたら幸いです。
Trail Runner 石川弘樹